「顧客体験」を理解して経営に取り込もう

2017.07.07

[コンサルの視点から] 

「顧客体験」が重視されている

 最近「UX」という言葉を目にしませんか。

 

 「UX」とは”ユーザーエクスペリエンス”の略語です。

 ユーザー(顧客)が「商品やサービスを利用して獲得できる体験」のことを広く指して言います。

 
 最近は、この「顧客体験」を大切にした商品やサービスが開発・販売されています。

 

 例えば国内で6,800万人を超えるユーザー数を誇るアプリのLINEは、これまでのメールが「手紙」として機能していたのに比べ、ユーザー同士の「気軽な会話」という体験を重視して設計したことが成功要因とされています。

 タクシー会社の三和交通は、タクシーでも時にゆっくりと走ってほしいという顧客の声に応え、それを運転手に伝える押ボタンを作って乗車できるようにしたことで高い評価を得ています。

 

 単なる機能や仕様だけでは、商品やサービス自体で差別化ができずに、他と同質化して厳しい競争に陥ってしまいがちな昨今、顧客の立場に立った「UX」の視点は、事業展開のキーワードの一つになっているようです。

 

顧客体験を活用した事例

 「UX」は一見難しそうな言葉ですが、とても幅広い概念であり、中小物販業やサービス業にも応用でされています。

 
 ある珈琲豆焙煎店ではコーヒーに関するセミナーを月に数回開催しています。営業時間の前後を使って、コーヒーの淹れ方や飲み比べなど1時間半ほどのプログラムを有料で提供しています。

 顧客が珈琲に関する新しい体験・学習を通じて情報や味覚の幅を広げることで、珈琲への愛着はもちろん、お店への信頼度・親近感も高まり、顧客の固定化に大きく寄与しています。

 

 全国規模で広がりを見せている「街ゼミ」「街バル」は、川崎市内でも複数の商店街で実施しており、個店での体験・機会を持ってもらうことで、顧客の気持ちのハードルを下げて店の認知度アップと固定客化していく活動と言えましょう。

 

顧客体験を経営に取り込むには

 それでは、顧客体験を経営に取り込むには、どうしたら良いでしょうか。

 ①顧客ニーズを理解する、あるいは拾うのではなく、顧客と同じ視点で共感すること

  事業者・売り手目線では顧客と対等にはなれず、共感ができません。

  自分も様々な顧客体験を積んでいくことが、共感できる視点を持つ近道です。

 
 ②様々な顧客とのコミュニケーション機会を持つこと

  前出の珈琲店では、セミナーが販売だけでなく顧客とする時間となっています。

  そこから得られる会話やお客様からの意見などが、新しいサービス提供のきっかけにもなっているようです。

  SNSによる情報発信、顧客からの反応も貴重なコミュニケーション手段です。

 

 ③顧客を囲い込むのではなく、広い視野で固定客(ファン・支持者)になってもらうことを考えること

  短期的な接点ではなく、長期的な関係づくりを目指すこと姿勢が大切です。  

 
 さあ、あなたの会社・お店ではどのような「顧客体験」を作っていきますか?

 

        (川崎商工会議所会報誌2017年7月号に寄稿した内容に加筆しています)