2024.07.16
[強くてやさしい会社]
離職率の高さが示すこと
どの業界でも人手不足が叫ばれ、採用が難しいという話を伺います。
採用することも大事なのですが、
一方で 離職防止については諦めている経営者も少なくありません。
「去る者追わず」ではあるものの、もったいないと思 います。
日本における一般労働者(常用雇用者、2022年)の離職率は15%です。
単純にすると7年の間に社員全員が入れ替わってしまう計算です。
離職理由は、企業側の都合によるものは1%程度に過ぎず、大半は個人的理由です。
個人的理由には、結婚、出産・育児、介護・看護なども含まれますが、
重要な問題は、他社への転職に伴う離職、すなわち転職的離職者です。
キャリアアップという前向きな理由は少人数で、大半は
人間関係が嫌になった、長時間労働や休日への不満、仕事の内容が合わないなど、
企業や組織に不平不満が募り、嫌気がさしたことが原因です。
ですから、転職的離職率の低さは、社員の満足度や幸福度の指標ともいえます。
離職率は改善できる
離職率の低さ、社員の満足度に関係するのは、
「働きやすさ」と「働きがい」の2つのポイントです。
「働きやすさ」は労働時間や休日、福利厚生制度や職場環境に関する側面です。
一方、「働きがい」は自身の頑張りが賃金に反映される、
あるいは仕事を通じて成長に繋がっているかなどを表します。
どちらか一方だけでは片手落ちで、 両方が相まって生き生きと働ける職場になります。
東海地方で介護事業を展開する事業者は、2019年は離職率が60%にも達している組織でした。
この状況を打開しようと、経営者らが働きやすさと働きがいの両面について改善に乗り出しました。
1年目は残業時間削減や多様な勤務制度、
あるいは作業効率を上げるツール導入など働きやすさを目指す環境改善を行いました。
2年目は職員が成長できるきっかけとなる教育制度の充実を実施。
3年目は自己の成長が認められる評価制度の構築など働きがいを高める施策を手掛けていきました。
その結果として、3年余りで、離職率を約4%にまで激減させることができました。
職員数も増加して、新人の離職者も出なくなるなどの改善を達成させることができたのです。
トップの意気込みさえあれば、大きく改善できる事例といえましょう。
離職率低下がもたらすもの
離職率が低下して、社員やスタッフが定着すると、業務への習熟度が増し、
生産性向上や顧客からの信頼感・ 満足度も向上します。
会社の風土を理解・体得した人材を育成し、伝承していくためにも、人材の定着は欠かせ ません。
今在職している社員や、アルバイト・パートも、ご縁があって会社やお店で働いている方です。
働きやすさと働きがいの両面から、職場環境や制度を見直してみましょう。
※ 川崎商工会議所会報誌「かいぎしょ」2024年7・8月合併号
連載『儲かる!商売に役立つワンポイント』に寄稿した記事です。
(代表取締役/中小企業診断士 有村知里)