2026.06.10
[小さくても強くてやさしい会社づくり]
20人前後になると、現場ごとの差が見えやすくなる
社員が20人前後になると、
担当や現場ごとの差が見えやすくなります。
ある人は丁寧に教えている。
別の人は、見て覚えてほしいと思っている。
ある部署では情報共有ができている。
別の部署では、仕事が属人化している。
このように、同じ会社の中でも、
教え方や仕事の進め方にばらつきが出てきます。
もちろん、人によって得意不得意はあります。
教え方が完全に同じである必要はありません。
けれども、最低限の基準がないと、社員は迷います。
個人の感覚に任せると、育成に差が出る
これまで見てきた会社でも、
営業部署で人によって営業の回り方が大きく違うケースがありました。
訪問件数。滞在時間。お客様への声かけ。丁寧さ。一日の回り方など。
そうした違いによって、新規顧客数やリピート数にも差が出ていました。
ただ、その違いは十分に言語化されていませんでした。
そのため、ある先輩社員の下につくと、お客様の反応がよい社員が育つ。
別の先輩社員の下につくと、また違う育ち方をする。
これは、教える人が悪いという話ではありません。
仕事ができる人ほど、自分の感覚で自然にやっていることがあります。
しかし、その感覚が言葉になっていないと、
教わる側は何を真似すればよいのかわかりにくくなります。
「育っている状態」を決めておく
20人前後の会社で大切なのは、
育成の基準を見えるようにすることです。
「一人前になってほしい」
「早く覚えてほしい」
「もっと主体的に動いてほしい」
こうした言葉はよく使われます。
けれども、何ができれば一人前なのか。
1週間後、2週間後、1か月後、3か月後に、
どの仕事がどの程度できていればよいのか。
そこがあいまいだと、教える側も教わる側も迷います。
実際に、うまく育成できていた会社では、
新人や異動者が入ったときに、
1週間、2週間、1か月、2か月、3か月で、
どの仕事がどれくらいできていればよいのかを整理していました。
教える側も、教わる側も、
今どこまで進んでいるのかがわかる状態になっていたのです。
仕事を分けると、教える順番が見えてくる
その会社では、業務をABCに分けていました。
Aは、常に発生する基本業務。
Bは、時々発生する業務。
Cは、頻度が低く、特殊な業務。
新人は、まずAランクの仕事に集中する。
Aランクの仕事を、人に聞かなくてもできるようにする。
その後、BやCの仕事へ広げていく。
このように分けると、教える側も、
何から教えればよいのかが明確になります。
教わる側も、最初からすべてを覚えようとして
混乱することが少なくなります。
最初から細かいマニュアルを作る必要はありません。
まずは、仕事の手順を書き出してみる。
よくある仕事と、時々ある仕事を分けてみる。
新人が最初に覚えることを決めてみる。
それだけでも、育成は見えやすくなります。
教える人の善意に頼りすぎない
中小企業では、教える人も日々の仕事を抱えています。
教えたい気持ちはあっても、時間がない。
自分の仕事を進めながら、新人にも対応しなければならない。
感覚ではわかっていても、言葉にする余裕がない。
厚生労働省の「能力開発基本調査」でも、人材育成上の問題点として、
「指導する人材が不足している」
「人材育成を行う時間がない」といった課題が挙げられています。
だからこそ、育成を教える人の善意だけに任せすぎないことが大切です。
仕事の手順を簡単に書き出す。
新人が最初に覚えることを整理する。
教える人と確認する人を決める。
月に一度、育成の進み具合を振り返る。
こうした小さな仕組みが、教える人を支えることにもつながります。
ばらつきをなくすより、最低限の基準をそろえる
20人前後の会社で、
すべてのやり方を同じにする必要はありません。
人によって得意な教え方もあります。
現場ごとの工夫もあります。
お客様との関係性によって、対応の仕方が変わることもあります。
大切なのは、すべてをそろえることではなく、
最低限そろえるべき基準を決めることです。
たとえば、お客様対応の基準。
品質や安全に関わる手順。
新人に最初に教える内容。
こうしたものは、事業の品質に関わります。
だからこそ、優先して見えるようにしておきたいところです。
人を大切にする経営とは、社員の個性を消すことではありません。
社員が迷わず学べるように、最低限の基準を整えること。
教える人が一人で抱え込まないようにすること。
教わる人が、今どこまでできているのかをわかるようにすること。
それもまた、人が育つ会社の大切な習慣なのだと思います。
次回について
次回は、30人前後の会社での人材育成について考えていきます。
30人前後になると、社長が直接見るだけでなく、
リーダーや管理者を通じて人を育てる段階に入っていきます。
引き続き、「小さな会社の、人が育つ習慣」として考えていきます。
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執筆者
アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
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