2026.06.17
[小さくても強くてやさしい会社づくり]

前回、20人前後の会社では、
教え方や仕事の進め方のばらつきを
見える化することが大切だと書きました。
今回は、30人前後の会社での人材育成について考えてみます。
社員が30人前後になると、
社長が一人ひとりの仕事ぶりを直接見ることは難しくなります。
現場で何が起きているのか。
誰が困っているのか。
新人や若手がどこでつまずいているのか。
お客様とのやり取りに、どのような変化があるのか
などが、なかなか把握できなくなります。
この段階で必要になるのは、現場を支える人です。
現場を一緒に見てくれる人。
社員の様子に気づいてくれる人。
社長と現場の間をつないでくれる人。
そうした、リーダーを育てていくことが大切になります。
最初からリーダーらしい人ばかりではない
ただ、最初から立派なリーダーがいるとは限りません。
限られたメンバーで経営している中小企業では
それでも、誰かをリーダ―にしなければならないときがあります。
コミュニケーション力もあって、お客様からの信頼も厚い。
仕事はできる。
でも、社内ではあまり前に出ない。
会議でも積極的に発言するタイプではない。
管理的な業務はあまり得意ではない。
実はそういう人でも、役割を任されることで、
見え方が変わっていくことがあります。
任されたことで、視野が変わる
ある会社の事例をお話ししましょう。
営業力があり、お客様からの信頼も厚い社員の方がいました。
もともと仕事はできる方でしたが、
実は、社内ではどちらかというと、
前に出るタイプではありませんでした。
ところが、ある事情から、
8人ほどのチームをまとめる立場になりました。
十分に準備された抜擢だったとは言えない面もあり、
会社としても、本人としても、
走りながら役割を覚えていくような形だったと思います。
それでも、その方は変わっていきました。
それまでは、自分の目の前にある仕事を
しっかり進めることが中心でした。
けれども、チームを任されるようになると、
自分の仕事だけではなく、チーム全体を見るようになっていきました。
新しく入ったメンバーをどう育てればよいのか。
チームとして、どこに課題があるのか。
数字やデータをどう見ればよいのか。
計画をどのように実行していけばよいのか。
そうしたことへの意識が、
一段高くなっていったように感じました。
その姿を見て、実はその方がもともと持っていた力が、
役割によって引き出されたのではないかと思いました。
その方自身が変わっただけではなく、
社長も、その方を見る目が変わっていったように感じました。
人は、任されることで変わっていくことがあります。
もちろん、すべての人が同じように変わるわけではないでしょう。
それでも、役割が与えられたことによって
本人の中にあった責任感や視野の広さが
表に出てくることはあるのだと思います。
任せることと、丸投げは違う
ただし、任せれば自然に育つという話ではありません。
任せることと、丸投げは違います。
「任せたから、あとはよろしく」
「現場のことは全部見ておいて」
「困ったら何とかして」
これでは、任された人が一人で抱え込んでしまいます。
特に、30人前後の会社では、
役職や権限があいまいなまま、
現場のまとめ役を担うこともあります。
たとえば、物品購入の判断。
お客様対応の判断。
人員配置やスケジュールの調整。
トラブルが起きたときの報告。
どこまで自分で判断してよいのか。
どの金額から社長に確認するのか。
どの段階で相談すべきなのか。
そこがあいまいだと、任された人も迷います。
責任感のある人ほど、
自分で何とかしようとして抱え込んでしまうこともあります。
だからこそ、任せるときには、
役割だけでなく、判断の範囲も一緒に伝えることが大切です。
任せるときは、判断の範囲を決める
30人前後の会社で人を育てるためには、
任せる範囲を決めておくことが大切です。
たとえば、
「この範囲は自分で判断してよい」
「この金額を超える場合は相談する」
「お客様との約束が変わるときは、事前に共有する」
「チーム内で困りごとが出たら、週に一度まとめて報告する」
このように、判断の範囲を決めておくだけでも、
任された人は動きやすくなります。
細かな口出しをしすぎると、本人は育ちにくくなります。
一方で、何も決めずに任せると、不安や負担が大きくなります。
大切なのは、任せた後も、必要な場面で相談できるようにしておくこと。
30人前後の会社では、社長が全員を直接見る段階から、
現場を支える人と一緒に育てる段階へ移っていきます。
そのときに必要なのは、社員に任せること。
今いる社員の中にある力を見つけ、少しずつ役割を任せていくことです。
期待を伝え、判断の範囲を整え、相談できる関係をつくることで、
人は役割の中で育っていきます。
人を大切にする経営とは、社員の力を信じることでもあります。
ただし、信じることは、任せっぱなしにすることではありません。
任せる。見守る。必要なときに支える。
その積み重ねの中で、現場を支える人は少しずつ育っていくのだと思います。
次回について
次回は、50人前後の会社での人材育成について考えていきます。
50人前後になると、社長が直接見るだけではなく、
会議や振り返り、目標共有などの「場」が、人を育てる意味を持つようになります。
引き続き、「小さな会社の、人が育つ習慣」として考えていきます。
────────────────
執筆者
アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
────────────────
▼ ご相談について
「うちの場合はどう考えればよいのだろう」
そんなときは、状況を整理するところからご一緒しています。
経営計画、チームづくり、社員との対話、経営判断の整理など、
一人で抱え込まずに考えたいときにご相談ください。


