経営計画に社員を巻き込む方法―数字を自分の仕事につなげるために

2026.08.12

[経営計画] 

アイパス経営シリーズ経営計画編第3回「経営計画に社員を巻き込む方法―数字を自分の仕事につなげるために」のアイキャッチ画像

経営計画を社員に説明したものの、思うように反応が得られない。

  
意見を求めても発言が出ず、

結局は社長が決めた計画のままになってしまう。

  
そのような経験を持つ経営者も、少なくないのではないでしょうか。

  
経営計画に社員を巻き込むとは、社員に計画書を作らせることではありません。

また、売上目標を示し、その達成を任せることでもありません。

  
会社の現状や目指す方向を共有し、

自分の仕事が会社の数字とどのようにつながっているのかを理解してもらう。

そして、自分たちにできる行動を一緒に考えていくことです。

  
ただし、社員が最初から積極的に意見を出したり、自分から数字を確認したりするとは限りません。

  
会議で発言することにも、数字を見て仕事を振り返ることにも、慣れる時間が必要です。

社員参加は、一度の説明や話し合いで完成するものではなく、

毎月の振り返りや小さな行動を通じて少しずつ育っていきます。

 

経営計画を説明するだけでは自分ごとになりにくい

社長が会社の方針や売上目標を丁寧に説明しても、

それだけで社員が経営計画を自分ごととして受け止めるとは限りません。

   
社員から見れば、会社全体の売上や利益は、

自分の日々の仕事から離れた数字に感じられることがあります。

 

数字の背景が分からなければ、

目標を社長や会社から与えられたものとして受け止めるのも自然なことです。

  
自分の仕事が会社の数字にどのようにつながっているのか。

自分たちの行動によって、何を動かすことができるのか。

その関係が見えなければ、経営計画は社長の計画のままです。

  
社員を巻き込む第一歩は、経営計画のすべてを理解してもらうことではありません。
まずは、それぞれの社員やチームが把握できる範囲から、

会社の状況と数字の意味を共有することが大切です。

 

社員が理解できる範囲から数字を共有する

経営計画には、売上、利益、件数、客数など、さまざまな数字が含まれます。

  
しかし、数字を並べて示すだけでは、社員は何を見ればよいのか分かりません。

単に売上の増減を確認するだけでは、具体的な行動にもつながりにくいでしょう。

  
ある支援先では、チーム単位で

自分たちの売上がどのように成り立っているのかを理解するところから始めました。

  
どの活動が売上につながっているのか。
売上を動かすポイントはどこにあるのか。
自分たちの行動によって変えられる部分は何か。

  
専門的な言葉を覚えることよりも、数字が動く仕組みを理解することを大切にしました。

  
また、自社の数字だけでなく、統計資料や業界のデータを見る方法も伝えました。

すると、社員が自分から毎月のデータを確認し、自社がどのような位置にあるのかを調べるようになりました。

  
数字を見るようになった背景には、

自分たちの行動と数字の変化とのつながりが、少しずつ見えてきたことがあったのだと思います。

  
社長側には、社員が考えるために必要な情報を出していく姿勢が求められます。

  
すべての経営情報を一度に開示する必要はありません。

しかし、経営計画に関係する数字や、自社の置かれている状況を理解するための情報がなければ、

社員は判断することができません。

 

数字とともに、会社のありたい姿を考える

売上目標や件数目標だけでは、人は動きにくいものです。

  
数字だけを追いかけると、目標は社員にとってノルマになりやすくなります。

達成できなかったときに責任を問われる数字だと感じれば、

挑戦的な目標よりも、達成しやすい控えめな目標を選びたくなることもあります。

  
そこで、定量目標とともに、

会社やチームがどのような状態になっていたいのか」を考えることが大切です。

  
実際の話し合いでは、お客様から自社をどのように思っていただきたいか、

そのために自分たちには何ができるかを考えてもらいました。

  
数字を増やすことだけを目的にするのではなく、

お客様との関係、サービスの質、社内の連携など、目指す姿を具体的にしていきます。

  
たとえば、次のような状態です。
・お客様から相談していただける機会が増えている
・お客様の声が社内で共有されている
・チーム内で必要な情報を伝え合えている
・一人ひとりがサービスをよりよくする工夫を考えている

  
こうした目指す姿が見えてくると、売上や件数などの数字にも意味が生まれます。

  
数字は社員を追い立てるものではなく、目指す状態に近づいているかを確認するための目印になります。

 

発言することにも、数字を見ることにも慣れが必要

社員に意見を求めても、最初から活発な発言が出るとは限りません。

  
これまで会社の方針や数字について意見を求められた経験が少なければ、

何を言えばよいのか分からないこともあります。

 

自分の考えを述べてよいのか、社長と異なる意見を言ってもよいのかと、

ためらう社員もいるでしょう。

  
これは、意欲がないからとは限りません。
会議や研修で考えを伝える場に慣れていないこともあります。

  
そのため、一度の話し合いで多くの意見を出してもらおうとせず、月に一度の振り返りを続けました。

  
数字を確認し、実際に取り組んだことを振り返り、次にできることを考える。

この流れを繰り返すうちに、社員が自分から数字を見たり、必要なデータを調べたりするようになりました。

  
経営計画への参加は、会議に出席することだけではありません。

  
自分から数字を確認する。
現場で気づいたことを伝える。
小さな工夫を試してみる。

  
こうした変化も、経営計画を自分ごととして考え始めた表れです。

  
大切なのは、最初から完成された意見や大きな成果を求めないことです。

考える場に慣れ、発言し、自分の行動を振り返る経験を重ねることで、

社員の参加は少しずつ深まっていきます。

 

小さな工夫を認めることが次の行動につながる

社員の主体的な行動は、大きな提案や目立った成果として現れるとは限りません。

    
ある会社では、事務を担当する社員から、

「請求書を送る際に短いメッセージを添えてはどうか」という提案がありました。

お客様との接点を少しでも温かいものにしたいと考え、自ら始めた取り組みです。

  
それによって、すぐに売上が変わったわけではありません。

  
それでも、お客様から電話があった際に、

添えたメッセージについて反応をいただくことがありました。

社員からその報告を受けたとき、

自ら考えて試してくれたことをうれしく感じました。

  
経営計画を社員の自分ごとにするためには、

このような小さな行動を大切にすることが必要です。

  
成果がすぐに表れなかったとしても、自分なりに考えて試したことを認める。

結果だけでなく、挑戦した過程に目を向ける。

それが、次の工夫や発言につながっていきます。

  
社員が動かないように見えるとき、それを本人の意欲だけの問題にしないことも大切です。

  
判断に必要な情報が共有されていない。
意見を述べる場に慣れていない。
自分の考えで行動してよいと感じられていない。

  
そのような背景があるかもしれません。

  
経営計画に社員を巻き込むとは、参加を求めるだけではなく、参加できる環境を整えることです。

  
社員が理解できる範囲から情報を共有する。

数字と自分の仕事とのつながりを考える。

会社のありたい姿を一緒に描く。

小さな行動を試し、その結果を毎月振り返る。

  
この積み重ねによって、経営計画は社長から与えられたものではなく、

自分たちが関わり、動かしていく計画へと変わっていきます。

 

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執筆者

アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
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