中小企業のKPI設定ー売上目標を日々の行動につなげるには

2026.09.29

[経営計画] 

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経営計画で売上目標を決めても、それだけでは日々の行動は変わりません。

  
「今年は売上を○%伸ばそう」と決めたとしても、

社員からすれば、今日何をすればよいのかまでは分からないからです。

   
売上は大切な数字ですが、あくまでもさまざまな行動の結果として表れるものです。

   
では、その売上をつくっているのは何なのか。
どの数字を見れば、自分たちの行動と結果のつながりが分かるのか。

   
そこで考えたいのがKPI(重要業績評価指標)です。

 

KPIとは、会社の目標に向かって順調に進んでいるかを、途中で確認するための指標です。

    
売上や利益などの最終的な結果だけを見るのではなく、

その結果につながる行動や途中経過を数字で捉えるために使います。

 

中小企業では、難しく考える必要はありません。
「目標を達成するために、途中でどの数字を見ておけばよいか」と考えると分かりやすいでしょう。

 

私自身、中小企業の支援現場では、KPIという言葉を前面に出してきたわけではありません。

   
ただ、企業と一緒に売上の中身を見ながら、

どの数字が結果につながっているのか、

さらに社員がどのような行動をすればその数字が変わるのかを考えてきました。

    
今振り返ると、それは結果の数字を少しずつ分解し、

日々の行動につなげていく、KPIを考えるプロセスに近いものでした。

     
KPIを考えるうえで大切なのは、難しい指標をたくさん設定することではありません。

会社の目標と、社員の日々の行動との間をどうつなぐか。

 そして、その指標の意味を社員自身が理解し、自分たちの行動とのつながりを考えられるか。

 

この記事では、実際の支援事例をもとに考えてみます。

 

 

売上だけを見ても、次の行動は見えてこない

ある福祉・介護事業者は、支援開始当初は売上を確認していました。

 

しかし、売上はさまざまな活動の結果として表れる数字です。

前月や前年との比較だけでは、次に何を変えればよいのかまでは見えてきません。

    
そこで、売上を構成する要素を一つずつ確認し、

利用者数、さらに新規利用者数へと、

日々の行動との関係が見えやすい数字に着目していきました。

    
KPIは、最初に一つ決めて固定するものではありません。

最初から「正しいKPI」を探し当てることでもありません。

 

実際の数字と行動の関係を確認しながら、

 次の行動につながる指標へ絞り込んでいくことも大切です。

 

KPIは「自分たちで動かせる数字」を意識する

新規利用者数は、売上よりも日々の活動に近い数字です。

ただし、新規利用者数も社員の努力だけですべてを決められるものではありません。

外部の要因にも左右されます。

   
そこで、その数字につながる行動をさらに見ていきます。
たとえば、
– どのような相手に働きかけたのか
– どのくらい訪問したのか
– どのような情報を提供したのか
– どのような関係づくりをしてきたのか
といったことです。

    
顧客先ごとのデータを比較した際、社員自身が数字を見ながら、

自分たちの営業活動に思い当たることがあったようです。    

その後、自ら訪問を意識するようになりました。

    
顧客先ごとの数字そのものをKPIにしたわけではありません。
しかし、数字をきっかけに自分たちの行動を振り返り、

次の動きを考えるようになったことに意味があります。

      
KPIは、社員を管理するためだけの数字ではありません。

    
自分たちが何をすると結果が変わるのかを考えるための目印として使うことが大切です。

 

数字を分解すると、自分の仕事とのつながりが見えてくる

会社全体の売上だけを見ていると、自分一人の仕事との関係は見えにくいものです。

    
しかし、結果を少しずつ分解していくと、自分たちが動かせる部分が見えてきます。

    
たとえば、

売上
↓
利用者数
↓
新規利用者数
↓
そのための訪問や働きかけ
という具合です。

    
業種によって、この分解の仕方は違います。

      
新規利用者数が重要な事業もあれば、

提案件数や見積件数、リピート率などを見る方が適している事業もあります。

     
だからこそ、一般的なKPIをそのまま持ってくるのではなく、

自社ではどこが結果を左右するポイントなのかを考える必要があります。

      
また、数字は多ければよいわけではありません。

      
私がKPIを考えるときに意識しているのは、

– 数を増やしすぎない
– 社員が自分たちで動かせる数字を選ぶ
– 社員自身が意味を説明できる数字にする
ということです。

  
数字をたくさん並べても、それぞれの意味が分からなければ行動にはつながりません。
少ない指標でも、それが日々の仕事とつながっていれば、振り返りに使うことができます。

 

KPIを行動に落とすことで、自分ごとになる

KPIや行動目標をすべて社長や支援者が決めて渡すだけでは、

社員にとっては会社から与えられた数字になりやすくなります。

    
そのため、最初の大枠はこちらから示しながら、

具体的な行動については社員自身が考えられるようにしていきました。

    
たとえば、商品知識をもっと高めたいという考えから、

社員が自分たちで月1回程度の勉強会を企画し、実施するようになったことがあります。

      
これは、売上そのものを直接増やす行動ではありません。
しかし、自分たちが目指したい状態を考え、

そのために必要な行動を自ら決めたという点に大きな意味があります。

        
また、個人の目標として、営業の移動時間や段取り時間を短くし、

1日当たりの訪問件数を増やそうと考えた社員もいました。      
新規の指名を月に何件獲得するかを、自分で目標として設定した例もあります。

      
このような目標は、会社から一方的に与えられたノルマとは少し違います。

     
自分の仕事を振り返り、自分で変えられることを考え、その結果として置かれた数字です。

     
自分で目標を設定した社員の中には、その後、着実に成果を伸ばしていった人もいました。

     
KPIを設定する目的は、社員に数字を背負わせることではありません。

 

目標と自分の行動との間に橋を架けることです。

 

KPIは毎月振り返り、必要なら見直してよい

KPIを設定したら、それを定期的に振り返ります。

 

ただし、確認するのは達成したか、未達だったかだけではありません。

 

新規利用者数であれば、その数字につながる行動を確認します。

 

どのくらい行動したのか。
誰に、どのような働きかけをしたのか。
前年の同じ時期と比べてどうだったのか。
季節による変動など、外部の要因はなかったのか。

 

自分たちの行動だけでは変えられないこともあります。

だからこそ、結果の数字だけで社員を評価するのではなく、

どこまでが自分たちの行動によるものなのかを一緒に考えることが大切です。

 

また、一度決めたKPIをずっと変えてはいけないわけでもありません。

 

想定より早く目標を達成したため、途中で数字を上方修正したこともありました。

 

反対に、追っている数字が実際の行動につながっていないことが分かれば、

見る数字そのものを見直すことも必要でしょう。

 

KPIは固定された管理表ではありません。

 

数字を見て、行動を振り返り、次に何をするかを考えるためのものです。

 

売上目標だけでは、社員は今日何をすればよいのか分かりません。

 

売上を少しずつ分解し、自分たちの行動で動かせる数字を探す。
その数字を社員と共有し、実際の行動と照らし合わせる。
そして、毎月振り返りながら必要に応じて見直していく。

 

この繰り返しによって、経営計画の数字は、机の上の目標から日々の仕事へとつながっていきます。

 

KPIは、社員を数字で管理するためのものではありません。
会社の目標と、自分たちの日々の行動とのつながりを考えるための道具です。

       
そのようにKPIを使うことが、

経営計画を「作った計画」から「動く計画」に変えていく一歩になるのではないでしょうか。

 

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執筆者

アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
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