2026.01.28
[小さくても強くてやさしい会社]
~経営の主導権と、自分たちの価値~
「価格はこちらで決められますか?」
そう聞かれたとき、言葉に詰まってしまう経営者は、
実は少なくありません。
中小企業の経営相談の現場で、
この場面に何度も立ち会ってきました。
値上げが怖い。断られるかもしれない。
長く付き合ってきた取引先だから、強く言えない――。
その気持ちは、よく分かります。
けれども、価格を決められない状態が続くと、
会社は目に見えないものを少しずつ失っていきます。
価格を決められないとき、会社で何が起きているのか
価格を相手任せにしていると、表面上は取引が続いているように見えます。
しかし、社内では次のような変化が静かに進行します。
・「この仕事は、これだけ頑張ってもこの金額なのか」という違和感
・社員が自社の仕事の価値を説明できなくなる
・利益が出ず、改善や投資に手が回らない
・経営判断が常に“相手基準”になる
価格の問題は、単なる数字の話ではありません。
経営の主導権がどこにあるのかという、構造の問題です。
価格とは「価値を言語化した結果」
私が支援している企業の中に、
「価格の話になると、どうしても自信が持てない」
という経営者がいらっしゃいました。
詳しくお話を伺うと、その会社は
・顧客対応が非常に丁寧
・トラブル時のフォローが早い
・社内でノウハウが蓄積されている
という、明確な強みを持っていました。
ところが、それらが価格の根拠として言葉になっていなかったのです。
価格は、感覚で決めるものではありません。
「自分たちは、どんな価値を提供しているのか」
それを言語化した結果が、価格です。
価格を決められない会社が失っている3つのもの
① 経営の自立性(Independent)
価格を相手に委ねるということは、
「判断の軸を外に置いている」ということです。
これは短期的には楽ですが、長期的には
経営の自立性を弱めます。
② 社員の誇りと判断基準
価格が曖昧な会社では、
社員も自分たちの仕事をどう説明してよいか分からなくなります。
結果として、
・値引き要請に弱くなる
・改善提案が出にくくなる
という状態が起きやすくなります。
③ 将来への選択肢
利益が出なければ、
人材育成、設備投資、新しい取り組みなどを
を選ぶ余地がなくなります。
価格を決められない状態は、
未来の選択肢を減らしている状態でもあります。
価格を「決められる会社」になるための小さな視点
いきなり値上げをする必要はありません。
まずは、次の問いから始めてみてください。
・私たちは「何を大切にして仕事をしているか」
・お客様は、なぜ他社ではなく私たちを選んでいるのか
・その価値は、社員が言葉にできているか
価格は、その延長線上にあります。
おわりに
価格を決めるという行為は、
強気になることでも、相手と対立することでもありません。
それは、
自分たちの仕事を、正しく扱うという姿勢です。
小さくても、強くて、やさしい会社であるために。
価格は、その姿勢を映す鏡なのだと思います。
次回は、
価格を「相手に委ねる経営」から
「自分で引き受ける経営」へと進むために、
Pricing myselfという軸を、
さらに、考えていきます。
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アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
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