2026.02.04
[小さくても強くてやさしい会社]

前回のブログでは、
「価格を決められない会社は、何を失っているのか」
という問いを投げかけました。
今回はもう一歩踏み込み、
価格競争から抜け出し、
自社の値付けに自信を持っている企業は、
実際に何をしているのかを、
具体的な事例から考えてみたいと思います。
非価格競争には「ハード」と「ソフト」の2つの源泉がある
価格競争から抜け出す経営というと、
「全く新しい商品」や、
「独自技術」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
確かに、それは非価格経営の重要な要素です。
しかし、それだけでなく、
非価格競争の源泉は大きく次の2つに分けられます。
1)ハード面での非価格経営の源泉
• そこでしか買えない商品・製品・技術
• 他社には真似できない品質や専門性
• 明確な差別化ができる独自の強み
2)ソフト面での非価格経営の源泉
• 少々高くても「ここに頼みたい」と思わせるサービス
• 素敵な社員・スタッフの存在
• 少量からの対応や、短納期対応
• 困ったときにすぐ相談できる安心感
• ワンストップで任せられる利便性
どちらか一方だけで成立するものではありません。
自社はどこで勝負するのかを、経営として決めているかどうか
が問われます。
事例1 A工務店|「値引きをしない」と決めた覚悟
ある工務店では、
健康にやさしい素材を厳選し、
「自社が本当に良いと思う素材しか使わない」
という家づくりを続けてきました。
当然、価格は安くなりません。
それでもこの工務店は、値引きをしないと決めています。
• 値引きを前提とするお客様
• 相見積もりを取るお客様
そうした場合は、最初からお断りする。
一見すると、強気な姿勢に見えるかもしれません。
かつては、
「良い家をつくっているのに、
地域の他の工務店と同列に比較され、
価格で失注してしまう」
という悔しい経験もありました。
そこで経営者は、
逆に単価を上げるという決断をします。
地域内での比較競争から抜け出し、
大手ハウスメーカーとも比較される土俵に立って、
「品質で選ぶ層」に向けた経営へと舵を切ったのです。
価格を上げることは、
さらなる失注のリスクを引き受けることでもあります。
それでもこの工務店は、
「誰に、何を届けたいのか」を明確にしたうえで、
非価格経営を目指したのです。
事例2 Bリフォーム会社|断る覚悟と、向き合う覚悟
もう一社は、地域密着型を徹底しているリフォーム会社です。
この会社は、
一件あたりの単価が低い小さな工事であっても、
丁寧に、きちんと対応します。
その積み重ねが信頼となり、
• 大口工事につながる
• 顧客からの紹介が生まれる
• 「困ったときには、まず相談する会社」として認識される
という良い循環が生まれています。
一方で、この会社も
相見積もりはしないと決めています。
場合によっては、仕事を断ることもあります。
価格に自信を持つ代わりに、
顧客との接点をきちんと持ち、
顔が見える関係を続けていく。
これもまた、
「価格を引き受ける覚悟」
「断る覚悟」
「向き合い続ける覚悟」
の積み重ねだと言えるでしょう。
価格を上げただけでは、非価格経営にはならない
ここで大切な点があります。
これらの2社は、
単に価格を上げただけではありません。
• 緻密な原価管理
• 利益構造の見える化
• 無理な仕事を前提にしない仕組みづくり
こうした取り組みを通じて、
「この価格で経営が成り立つ」ことを
自分たちで理解し、説明できる状態をつくっています。
価格に自信を持つためには、
感覚や根性ではなく、
自社の経営を把握していることが不可欠なのです。
Pricing myselfと、Independent(自立)は地続きである
これらの企業に共通しているのは、
「価格を決めた」こと以上に、
経営の主導権を自分たちの側に取り戻したという点です。
誰に売るのか。
どこまで関わるのか。
何を大切にし、何をしないのか。
それを相手に委ねるのではなく、
自分たちで決める。
その姿勢こそが、
Independent(自立)という軸につながっています。
覚悟としての Pricing myself
Pricing myself(非価格競争)とは、
強気になることでも、
うまく売ることでもありません。
自分たちの経営を、
自分たちの判断で引き受けること。
その覚悟が、
価格という形で表れているのだと思います。
そして、
経営としての自立や、価格を引き受ける覚悟は、
決して経営者一人では成り立ちません。
それを支えるのは、
日々の関わり方や、
厳しさと温かさが共存する組織のあり方です。
────────────────
アイパス経営コンサルティング株式会社
代表取締役・中小企業診断士
有村 知里
────────────────
▼ ご相談について
現在の状況を整理するところから、
ご一緒しています。


