経営理念はいつ作るのか?

2021.02.08

[事業計画・経営計画] 

企業理念、経営理念ができるときとは

 

最近読んだ本「たった三行で会社は変わる」(藤田東久夫著 2007年)

にこんなことが書いてありました。

 

藤田東久夫氏は、東証一部上場の株式会社サトーの代表取締役、CEOだった方です。

創業者の娘婿として会社を継承し、業容の拡大に貢献されましたが、

2011年に60歳という若さでお亡くなりになられています。

 

 

 

経営理念というものは、会社が存亡の危機に瀕するとき

または、これからどうなるか心配でたまらないときに企業家が策定するものだから、

危ないときに助けてくれる

 

業績が現状も将来も順風満帆な時に経営理念は作られない。

作る必要が無いからだ。

 

もしも会社がうまく行っているときに作られる経営理念があるとしたら、

それはきっと気が抜けた味けのないものになるに相違ない。

 (中略)

 

サトーの経営理念は、1975年、労働争議で会社が潰れかけ

そこから這い上がるときに作られた。」

 

 

当時サトーが作っていたのは、スーパーマーケットの値札付けに使われるハンドラベラーでした。

 

工場のストライキで製品が作れずに入手できなくては、スーパーの人たちが困ります。

 

そこで、製品の卸先代理店の店主たち(お客様)が

工場に集まって自分たちで作ろうとしたそうなのです。

つまり、得意先によるスト破りが行われたのです。

 

創業者は、自分たちは社会に必要なものを作っていることを強く自覚し

会社は社会の公器だと認識しました。

 

社会のために社業にあたろうと思い至り

経営理念を明文化したそうです。

 

 

他の会社ではいつ作っているのか?

 

私は会社が順風満帆な時に作る経営理念が

気が抜けるのとは思っていません。

 

しかし、実際のところ、

経営理念が作られるのは

 

①創業時

 

危機のときや危機を乗り越えた時

 

とお伺いすることが多いのです。

 

①創業時に作られた経営理念としては

1946年(昭和21年)1月、ソニーの創業者のひとり、井深 大氏が起草した
東京通信工業株式会社設立趣意書」が有名ですよね。

 

以前、手書きされた、その設立趣旨書の実物を

都内で展示されているのを見に行ったことがありました。

少し色あせた趣旨書から

熱い想いがこもったオーラが出ているように感じました。

 

②危機の時や危機を乗り越えた時

  という事例をご紹介します。

 

A社は、売上高の7割をも占める大口取引先が倒産し

自社も巻き込まれそうになり

立て直していく最中に作成しました。

 

B社では、創業から3年、がむしゃらに経営をしていくなかで

回りの経営者からの言葉などから、ふと振り返り

作ってみようと思い至りました。

 

C社は、ある日、経営学の先生の講演を聞き

「経営理念」の大切さを知ったそうです。

  きっと何か変わろうと思っていらしたときだったのでしょう。

翌月から家族で話し合い、半年を掛けて、経営理念を作り上げました。

 

A社、B社、C社のいずれも

現在、大変人を大切にする、温かな良い会社として知られ

地域にとっても、社会にとってなくてはならない存在です。

 

  先週のブログでご紹介した株式会社ISOWA

  社長様が悩んだときに作られたのでした。

 

経営理念は、会社にとっての心のよりどころ

となり、大きな根となって、樹木を成長させていくように見えます。

 

 

気づいたときが作るタイミング

 

今、経営が順調にいっていても、

経営理念、経営の在り方に想い至るというのは

経営に関して、「このままでいいのか」

と引っ掛かりがあるときなのでしょう。

 

だから、経営理念に気づいたとき

心を寄せたときが

作成のタイミングであり、機会なのです。