あなたの会社・店舗には経営理念がありますか?

2022.04.14

[事業計画・経営計画] 

経営理念は最初からあるわけではない

 コロナウイルス感染症が広がり、その対応に追われる中でも「経営について立ち止まって考える時間ができた」という経営者からの声をかなり聴きました。これまでは日々の業務に追われて無我夢中で動いていたが、ふと立ち止まった時に「何のために仕事をしているのだろうか。自社・自店の経営が目指すものは何だろうか。」を問うようになったというのです。
 ある製造業(社員40名)では20年ほど前、大口取引先の倒産のあおりを受けて危機的状況に陥りました。そこから数年は会社の体質を変えていくことで大変でした。ただ、陣頭指揮を執っていた後継者(現社長)は、そのなかで会社の在り方を考えるようになりました。立て直しのなかで、社員をいかに守るか、人が大切であることを痛感し、それを中心に経営理念を作ろうと決めました。
 経営理念を創業当初から掲げている方もいらっしゃいますが、この事例のように、実は途中で考えたという方は少なくありません。

 

理念の理解と浸透がもたらしたこと

 理念は作って飾っておくだけでは意味がありません。前述の会社では、朝礼などの機会を利用して、何度も何度も理念について話し、一緒に考え、理解を深めていきました。ホームページや会社案内にも理念を掲載し、社外へのアピールも怠りませんでした。
 社員への理解が深まるにつれ、お客様への対応や情報発信への姿勢にも変化が出てきました。会社の判断軸があることで、それに沿った行動ができるようになっていると社長は感じています。また、最近は人材募集でも理念の効果を感じていると言います。理念を理解し評価しての応募があることで、自然と採用にも役立っているそうです。

 

社員にとっての経営理念

 
 社員側から見た場合、経営理念はどのような効果があるのでしょうか。
 従業員数50名以下の中小企業に勤務する社員を対象としたある調査では、回答者の7割以上は経営理念が大切と答え、その効果を理解しています。理由として『企業経営の方向性の明確化』『社員のモチベーションの向上』『社内に一体感が生まれる』などがあげられました。方向性が明確だと、社員自身にとっても会社の方針に沿った正しい選択ができるようになります。さらに会社の商品やサービスへの信頼性を高める効果があると認識しています。
 経営理念は企業・店舗の土台や軸になるもののため、例えば販促ツールのように作ったからすぐに効果が出るものではありません。しかし、社員や顧客の会社やお店への信頼、判断や行動の基軸として、会社やお店の幹となっていきます。会社・お店の土台を強固にする経営理念について、あなたも考えてみませんか。

 

※ こちらの内容は、川崎商工会議所様会報誌(2022年4月号)に掲載いたしました。