「空気を読まない」気概が生む付加価値

2022.10.24

[強くてやさしい会社] 

世界に一つだけの完全オーダーメード万年筆

 

鳥取県鳥取市の駅前商店街に、「万年筆博士」という万年筆専門店があります。

私が訪問したのは2020年10月末。

地方の駅前商店街は人通りも残念ながら少なく、寂しい風情が漂っていました。

その中で、凛とした雰囲気を醸し出している店が、万年筆博士です。

 

万年筆博士

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同社は完全オーダーメードの万年筆を製造販売しており、

恐らく世界唯一、オンリーワンという会社です。

 

海外からのオーダーも多く、海外顧客による売上は5割も占めています。

価格も1本6万円からで、平均価格は18万円、最高価格は50万円を超えるものもあるそうです。

それでも、納期待ちは1年以上と、万年筆愛好家から絶大な人気を誇っています。

 

万年筆博士

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストイックな経営姿勢と新しいものへの挑戦

 

万年筆の製造工程は約270にも及ぶといいますが

それを全て一人でこなしているのが、

同社の経営者でもあり、職人でもある山本竜さんです。

 

フルオーダーメイドという考えは、1970年代に先代の初代社長が、

出版社社員との雑談しているときに生まれたそうです。

 

当時、出版社から作家へのプレゼントとして万年筆を贈ろうとしたところ

大手メーカーからオーダーメイドはできないと断られた、と聞いたそうなのです。

 

「大手でできなくても、当社だったら、機械も職人もあるから出来る!」

 

大手の強みである「量産」志向は、時として弱みになること、

逆に、小さな店だからこそ細かなオーダーに応えられるのではないかと

当社の強みを認識したそうです。

 

完全オーダーメードまでは道のりは遠く

経営も大変な時期があったそうです。

 

それでも、加工機械も自社開発するなどの工夫を重ね

2000年代にフルオーダーメイドシステムを完成させました。

 

その後も、古代に文字を書くために使われていた「イカ墨」(セピア)を

これも世界で初になる万年筆用インクとして開発されました。

 

さらに、オーダーメードという枠組みに慢心することなく

様々なことに挑戦されています。

 

万年筆博士 山本竜社長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空気を読まない」という意味

 

山本さんから、大事にしている言葉、座右の銘である言葉を教えていただきました。

とくに座右の銘ということではないけれど

「空気を読まない」という言葉は良いと思っているというお話がありました。

 

「空気を読む」というのは、周囲に自分の意見を合わせていくことです。

「空気を読まない」というのは、自分の確固たる信念や気概を

そのまま通すということです。

 

万年筆博士は、世の中の低価格競争に抗うように

オーダーメイドの道を突き進みました。

 

だからこそ、現在のような世界からも注目される店があります。

 

良い意味で「空気を読まない」のは

付加価値経営への必要条件なのかもしれません。