2022.11.21
[強くてやさしい会社]
厳しい状況が続く中小企業経営
昨今、円安や海外情勢の影響によって、
原材料費やエネルギー価格、物流費や労務費などが上がり、
企業の利益率や業績に大きく影響を及ぼしています。
発注元企業に対して、経費の上昇分を適切に価格転嫁できていますでしょうか。
物価上昇が顕著になり始めた今年3月の中小企業庁による調査では、
直近6カ月分のコスト上昇分を価格転嫁できたかについて
「(全く)価格転嫁できていない」が約2割もあり
「3割~1割程度しか価格転嫁できていない」という企業と併せると、
約半数の企業は価格転嫁が厳しい状況にあります。
発注側企業に対して協議できたかについては、
「発注側企業に協議を申込み、話し合いに応じてもらえた」企業割合は6割ありました。
(協議の結果、価格が変更されなかった場合を含む。)
一方で「リスクを恐れて協議を申し込まなかった」
「協議の申し込みを行ったが、応じてもらえなかった」
「発注側企業から取引価格の減額協議を申し込まれた」など、
価格協議自体が厳しいという企業も約1割存在しています。
情報武装と経営改善
厳しい環境下でも価格交渉を順調に進めるためには、
客観的な資料を用意し、他社事例も参考する情報武装が大切です。
さらに、価格以外の取引条件の模索、社内の作業工程など、
最終的な粗利益率・営業利益率を意識した改善を図ります。
① 関連法令を理解する
下請法への理解は十分でしょうか。問題となりそうな取引行為はありませんか。
② 価格交渉のための資料を準備する
これまでの販売量や価格の推移、原価構成や価格変更の必要性の理由が分かる資料を用意します。
相手にとって、自社はどの程度重要な取引先なのか、
なぜ自社が受注できているかなど、自社の強みも把握します。
同時に、市場データ(統計や業界データ)など客観的な資料・数値をもとに、
価格上昇の必要性をアピールします。
③ 代案も用意する
直接的な価格交渉だけでなく、取引先のニーズに合致しながらも譲歩できる提案ができないか検討します。
1)原価関連:より効率的な加工方法や材料への変更、設計変更や工程の見直しなど
2)物流費関連:納品頻度や納品単位の変更、倉庫の変更、包装方法の変更など
3)人件費関連:サービス対応の変更、納品後のメンテナンスフリー化の提案など
4)管理費関連:不必要に厳しい検査基準の変更、稼働していない金型の管理費軽減など
「中小企業・小規模事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック(中小企業庁発行)」
も参考になる資料です。
情報武装して様々な観点から価格交渉にあたっていきましょう。
なお、長期的には取引先の分散化を図り、
1社への依存度を低くするなど抜本的対策も望まれるところです。
<川崎商工会議所会報誌2022年11月号「儲かる!商売に役立つワンポイント」に掲載>