「有効供給」を生み出そう

2022.07.19

[コンサルの視点から] 

有効供給とは何か

 

 有効需要は聞いたことがあるけれど、有効供給って何だろう、と思われた方もいることでしょう。有効供給とは経営学者の坂本光司先生が提唱されている言葉です。
 好不況を問わず、長期にわたって好業績を持続している企業は、常に価値ある商品・サービスが提供をして、市場=お客様の支持を得ています。喉から手が出るほど欲しい、少し高くてもあの商品を買いたい・使いたいといった、お客様にとって有効な商品・サービスが供給できているか、即ち「有効供給」の有無によって会社の命運が決まるという考え方です。
 ここ2年ほどの新型コロナウイルス感染症の蔓延では、タイムリーに対応した新しい商品・サービスが生まれました。これも有効供給の一つでしょう。
 今後必要になる視点は、長期的で構造的な市場の変化に適応した有効供給を、いかにして生み出していくかということです。

 

伝統業界でも有効供給を生み出せる

 

 有効供給を生み出している、ある煎餅メーカー(Y社)の事例を取り上げます。
 煎餅業界は、消費量全体ではあまり落ち込んではいないものの、40代より若い人たちは消費量が少ないことや、ナショナルブランド(NB)の大手メーカーによる寡占化が進んでおり、中小メーカーや店舗の生き残りは必至という業界です。
 そのような煎餅業界にあって、Y社では若い人が好むスナック菓子のようなサクッとした食感の煎餅、母親が子供に安心して食べさせることができる煎餅、あるいはNB製品にはない1枚1,000円もする高級煎餅など、次々に新しい商品開発をしています。また、子供たちにも気軽に足を運んでもらい煎餅に親しむことができる、煎餅の手焼き体験や、職人の実演が見学できる工房を併設した小売店舗を開店しました。さらに煎餅を使った新感覚のカフェメニューも楽しめる場にもなっています。
 新しい挑戦に開店当初は苦戦したそうですが、今では若いファミリーが週末に訪れるようになり、客層もぐっと広がりました。

 このように、伝統の技術を活かしつつ、他社ができない新しい価値の提供を行っており、有効供給の事例として参考になります。

 

能動的な視点と姿勢を

 

 煎餅だけでなく、日本茶、伝統工芸、呉服やひな人形などの伝統的な業界では、消費者のライフスタイルや嗜好の変化といった環境変化に晒されています。このような中でも、果敢に有効供給を生み出して成長している企業事例がどの業界にもあります。
 新型コロナのような急激な変化は稀ですが、業界を取り巻く環境変化はゆっくりと、でも確実に起こります。問題意識を持ち、アンテナを高くしていく姿勢が、変わることと変わらないことを見極め、有効供給を生み出す能動的な視点と姿勢につながるのではないでしょうか。

 

   (川崎商工会議所会報誌 2022年7月号 「儲かる!商売に役立つワンポイント」)